目には目を。絶望には絶望を。『NHKラジオ深夜便 絶望名言』読了。

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私はときどき自分の「人生三大しあわせな日」を確認することがある。それで確認してみると、何年も前から必ずトップ3に、オザケンのライブに行った日が入っていた。だけど、他の人の「しあわせな日」ってどんな日があるの?と思って作ったのが、アンソロジーZINE「書いてみつけたしあわせ」だ。

18人分の“しあわせな日”が一冊になったエッセイ本である。
読むとこちらまでしあわせな気持ちになれる。


先月、フリーライター20周年&生誕50歳のイベントをして、本当にとても幸福な時間だったので、私はまた「人生三大しあわせな日」を更新したなぁとうれしく思った。

それでその直後に、精神的にものすごーく打ちのめされるような出来事があった。まさに天国と地獄。事前に調子に乗って浮かれていた分、落差が酷くて、私はしばらく起き上がれないほどだった(気持ち的に)。まさに絶望(詳しくは有料noteに書いている)。

そんなとき、ふと本屋さんで見かけたのが、表紙に「明けない夜もある」と書かれた『NHKラジオ深夜便 絶望名言』という本だった。


ちょうど「明けない夜」をさまよっていた私にとって救いとなるような言葉で、そうだよね、明けない夜もあるよねと思って即購入して、毎晩寝る前にちびちび読んだ。

本にも書いてあったのだけど、本当に落ち込んだときって、「明けない夜はない」とか「あきらめずにいれば夢は叶う」とか「明るい気持ちでいれば、幸せなことしか起きない」なんて言われると、余計に辛くなる。目には目を。絶望には絶望を。落ち込んだときは励ましよりも、同じ絶望を知っている言葉のほうが効く。

いつもは気に入った本を見つけると一気読みしてしまうのだけど、この本は傷口に薬を優しく塗るような感覚で、毎晩少しずつ読んでいった。

本では、カフカ、ドストエフスキー、ゲーテ、太宰治、芥川龍之介、シェークスピア。歴史に名を馳せる、そうそうたる人たちの絶望に関する言葉が紹介されている。

あんなに才能もあって、華々しく活躍していた人たちも絶望することがあったんだという事実が、ものすごく私を勇気づけた。あと名言の後には、著者である頭木弘樹さんによる解説と、自身の体験談も挟まれていて、それもすごく良かった。頭木さんは20歳のときに、突然難病になり、「もう一生就職も進学もできず、親にずっと面倒を見てもらうしかない」と言われた過去を持つ。

表紙に書いてあった「明けない夜もある」という言葉はシェークスピアの「マクベス」に登場する言葉だという。

私を最も勇気づけてくれた言葉が、カフカのこんな言葉だった。

ぼくは人生に必要な能力を、
なにひとつ備えておらず、
ただ人間的な弱みしか持っていない。
無能、あらゆる点で、しかも完璧に。


これは絶望すぎる。自分が完璧に無能な人間であると知ることは、本当に辛すぎると思って、でも私もまさに同じように感じていたので、そっかと思ってなんかちょっと絶望すぎて笑ってしまった。まったく救いがなさすぎて、逆に面白い。絶望の底ではないか。ウケる。


私は「人生三大しあわせな日」を確認するのと同じように、「人生で絶望した日」も数えているのだけど、40歳を過ぎるまでそれは1日しかなかった。人生に3つも要らない。その1日というのが、2つ下の妹が交通事故で亡くなった日なのだけど、そのとき私は23歳で、あぁ、これが世に言う「絶望」というものなのかと腹落ちしたことをよく覚えている。

でも、そのときにどん底を経験したと思っていたので、逆に、これから先は何が起きても私は大丈夫と思っていた。なんせ私はもう、底がどこにあるのか知っているのだから。あれより辛いことはないだろう、もう何が起きても大丈夫。

と思っていたら、今回のことがあった。どん底の下にさらにどん底があるとは聞いてませんけど?と思って、ものすごく腹が立っていたのだけど、本にはシェークスピアのこんな言葉が紹介されていた。

「どん底まで落ちた」と言えるうちは、まだ本当にどん底ではない。

キツイ。これは確かにキツイけれど、そうなのか?と思ったら、これまた笑えてきた。私のことを見透かされているようではないか。これでもまだどん底ではないのかと思ったら、ちょっと面白い。「マジで?ウケる!ちょっとやめてよ〜」とシェークスピアの背中をバンバン叩きたい。

そのほか覚えておきたい絶望名言を挙げてみる。

絶え間のない悲しみ、ただもう悲しみの連続(ドストエフスキー)
→それだわ…!と思って、スッキリした。本当にただもう、それだけ。

絶望することができない者は、生きるに値しない(ゲーテ)
→私は生きていていいんだなって肯定してもらえる気がした。

結局、1週間〜10日くらいかけて本を読み終えた。読み終える頃には少しは立ち上がれるようになっていた(気持ち的に)。

付箋がすごいことに

と、そんな感じで落ち込んだとき、言葉に救われることがある。病めるときも健やかなるときも、私はやっぱり本を開いていきたい(ようやく書けるくらいに回復したので書いてみた。渦中にいるときは言葉にできない)

さて、私が出町柳の洋館でやっている私設図書室 a little something では、悩みごとを書いて、直感で本を開き、出会った言葉を持ち帰る「ブック占い」ができる。年内のオープンデイは5回。直近は11/5(木)です。

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。