『「答えを急がない」ほうがうまくいく』読了!ついつい白黒つけたくなる理由。

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「枕元の両サイドにはお気に入りの鞄が置いてある」と、作家の新川帆立さんはエッセイに書いていたけれど、私の枕元には、読みかけの本とこれから読みたい本と、ペンとノートが置いてある(バッグに比べるとあまりに普通か)。

寝る前に本を読むのでその本と、違う本を読みたくなったときすぐに別の本が読めるように数冊。ペンとノートは夜中にふと思いついたことを、いつでもメモしておけるように。あと朝起きたときに見た夢を記録するため。

昨日の明け方5時頃、ふと目が覚めたので、枕元に置いていた『「答えを急がない」ほうがうまくいく あいまいな世界でよりよい判断をするための社会心理学』を読み始めた。

そうしたら、面白すぎて一気に引き込まれ、朝の9時くらいには読み終わっていた。

この本を手に取ったのは、ライター仲間の寒竹泉美ちゃんがブックライティングをしていたから、というのと、「答えを急がない」ほうがうまくいくというのを、私も経験として感じていたので、社会心理学の観点から専門家である三浦麻子先生がひも解くと、どういう理論になるのか知りたいと思ったから。

答えを急がない≒分からないままでいる、ことは結構難しいし、むしろ技術がいる高レベルなことだと考えて、私は過去にこんなnoteを書いた。


すると、やはり本でもそのようなことが書いてあった。

つまり人は、答えが見えないあいまいな状態がとても苦手であり、その状態から早く抜け出したくて、答えを急いでしまうと。じっくり考えて結論を出せばいいものを、あいまいな状態が不安でしかたなく、急いで結論を出した結果、失敗してしまう。人間はいつだって、白黒つけたくなるものらしい。

これは性格とかではなく、人とはもう、そういうものなのだと三浦先生は書いていた。

急いで結論を出したくなるのを「せっかちモード」、じっくり考えて結論を出すことを「じっくりモード」と呼び、どちらが良い悪いではなく、それぞれに良さがあるので、場面によって使い分けることも重要であると言う。

そして私が何より重要だと感じたのが、考えたり判断したりする「認知」は資源であり、枯渇してしまうことがあるという情報だった。

知的活動を行うエネルギーも限りある資源だと考えるのである。

体力については、疲れたから寝ようとか、明日は忙しくなりそうだから、今日はのんびりしていようとか、残りのエネルギーを考えて行動を気を付けたりはする。が、知的活動については上手くやりくりしようと意識することは、たぶん少ない。

だからこそ、重要な判断をするときは、疲れていないときの方が正しい判断が出来るだろうと考えて、翌日結論を出すことにしたりすることが大事なのだと、先生は言う。

そういえば、ブラックな会社に勤めていたとき、朝から晩までひたすらテープ起こしをして、原稿を書くことに追われてた。残業続きで睡眠時間も短い。だから、いつも脳が疲れていたのだろう、お昼ご飯に食べるお弁当すら選ぶことができなかった。

脳が疲れていると、こんなささいなことも決められなくなる。

そんなわけで、あいまいさに耐えることが難しいからこそ、あいまいさに耐えられる人がうまくいくのだと言う。あいまいさに耐えられないせいで、どれだけせっかちモードに乗っ取られているか(損をしているか)。

たとえば、フリーライターになりたいけど、思うほど稼げるかどうかはやってみないと分からないという状況。とてもあいまいなだ。しんどいと思う。

でも、会社員でいたら毎月決まったお給料は入ってくる。安心できる。ただ、今の会社で働き続けることはしんどい。本当にやりたいことは書くことだけど、あいまいな状況には身を置きたくない。みたいなことはよくあると思う。

せっかちモードで考えるなら、会社員でいることの方がよっぽどラクだろう。でも、じっくりモードで考えるとどうだろう。本当にやりたいことをやる人生にするためには、どう決断するのが良いのか。

と、こうしたことをさまざまな観点から理路整然と述べている三浦先生も、プライベートでは認知資源をなるべく使いたくなくて(仕事に全振りしたいそう)、ついせっかちモードで判断してしまうことが多く、こんな失敗もした、あんな失敗もした…的な個人的なエピソードがちりばめられていた。それがめっぽう面白く、すっかりファンになってしまった。

社会心理学の実験や論文から述べられている事例も多くて、ちょっと難しく思える部分もあるのだけど、語り口がとても優しく、時に関西弁を交えて、ユーモアたっぷりに解説してくれているのも良い。

難しい心理学の用語を、「みんなおばか」と紹介したり、研究結果の再現性を同じ実験をして確かめるることを「追試」というそうだけど、「ほんまかいな追試」「ほんまやんな追試」と名付けたりしてて、ホント面白い。

文章からチャーミングな人柄まで伝わってきて、まるで、三浦先生が直接私におしゃべりしてくれているような親しみやすさで読める。

この文章を書いたのは、ブックライターである寒竹泉美ちゃんなのに、三浦先生そのものの人格が浮かび上がってくるような文章で、そこが本当にすごいと思った。

三浦先生が書いたとしか思えない。

と思って読み終わったら、最後に泉美ちゃんがなんと、三浦先生の過去のTwitterの投稿をさかのぼれるだけさかのぼって全て(23万件)読み、三浦先生っぽい物の見方、考え方まですっかり身に付けて書いたというのだから、本当にその努力というか執念というか技術に、叫びそうになった。

論文の難しい話をこんなにも分かりやすくかみ砕いて書けるのも、京都大学の大学院まで出ており博士号を持ち、かつ小説家で理系ライターである泉美ちゃんのライティング技術があったからこそだと思う。本当にすごい。奇跡の一冊である。

これほどの情報をたったの2,000円で手に入れられるなんて、本当にありがたい。みんな絶対に読んだ方が良いよ!と思って、こうしてせっせとブログを書いている。みんな絶対に読んだ方が良いよ。

『「答えを急がない」ほうがうまくいく あいまいな世界でよりよい判断をするための社会心理学』
三浦麻子著


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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。