「おむつなし育児」をきっかけに知り合ったおむつなし育児研究所京都サロンの西山由紀さんから、30日から始まった展覧会「おまる美術館」のレポートを書いてほしいという嬉しい依頼。
初日にギャラリーに伺って、いろいろお話を聞かせてもらいました!
この週末はぜひ堺町画廊へ!
~なんだか楽しい…! 排泄に対する意識が変わる展覧会「おまる美術館」~
現代において、赤ちゃんの排泄といえば、紙や布などの「おむつ」が基本。ですが、「0歳からおまるを使って、体も心もすこやかに育児をしてみませんか」と提唱するのが、「おむつなし育児」です。そんな育児スタイルがあると知ったのは、3年前、私がまだ2人目を妊娠中だった頃。「やってみよう!おむつなし育児」という本に出会い、0歳児の赤ちゃんでもおまるでおしっこができるなんて! と目から鱗。本を読み終わる頃には、2人目は「おむつなし育児」で育てようと決心していたのでした。
この書籍の著者であり、「おむつなし育児研究所京都サロン」を主催しているのが、美しく着物を着こなす西山由紀さん。彼女が今回開催したのが、おむつなし育児の観点から見た「おまる」の展覧会――「おまる美術館」です。日本初の試みとなる何ともユニークなこの展覧会、そこには意外な事実と歴史と発見があったのでした。
会場となったのは、明治初期に建てられたという古い町家ギャラリー。入ってすぐの玄関や通り庭、2階まで吹き抜けとなった奥の三和土土間に、ヨーロッパや日本各地のおまるのほか、32点の写真資料が展示されています。
上流階級で使われていたという便座部分がビロードで覆われたおまる、ヒトラーが描かれたおまるにナポレオンのヒト型が中央に据えてあるおまる、武田信玄が使ったとされる便器のレプリカ(写真パネル)、そしてお料理もできる(!?)おまるなどなど…。展示してある透明ガラスのおまるの横には、さり気なくワイン用デキャンタが置かれていたりして、並んで置いてあるとどちらがデキャンタで、どちらがおまるか分からなくなってくるという遊び心たっぷりの展示に、ぐいぐいと惹きつけられます。
さらに楽しいのは、それぞれのおまるに付いている詳しい解説。使われていた時代や国、そこで誰がどんな風に活用していたのか。読みすすめるほどに、排泄の歴史は人類の歴史…そんなことを再認識するような歴史的事実、意外な事実にたくさん出合えます。例えば、下水道が整備される前の中世ヨーロッパではおまるを使うのが一般的で、おまるの中の排泄物は窓から投げ捨てられることも日常茶飯事。道路には糞尿があふれ、それらを踏まないようにと生まれたのがハイヒールだとか!
京都の街中でときどき見かける、町家の壁に張り付けてある小さな鳥居。これは神様を祀るため…ではなく、立ち小便を防ぐためのちょっとした細工だとか。オランダ・スキポール国際空港の男子トイレにある便器には、排水口の穴近くに小さなハエのイラストが描かれていて、実はこれ、男性が用を足すとき目標物があるとそこを狙いたくなるという心理をうまく使ったもので、こうすることで飛び散りによる汚れが激減したとか。
あまりにオープンに、いろいろな種類のおまるが展示されていて、それらを見ていると、排泄=不潔だとか恥ずかしいもの、隠しておきたいものといったような意識が薄れてきて、だんだん楽しいことのように思えてきます。睡眠や食欲と同じように、人にとって大事な欲求である排泄。なのに、排泄だけなぜかなおざりにされているような風潮に、西山さんは「排泄の歴史を知ることで、現代の排泄の受け止め方を見直すきっかけになればと思っています。赤ちゃんのお世話のときに限らず介護のときでも、排泄って嫌なことではなくて、ちょっとでも楽しいものとして受け取ってもらえたらうれしいですね」と話します。
まるでティーパーティでもできそうな優雅なセットはドイツの「お姫様のトワレットセット」
無事2人目を出産し、生後1ヵ月から恐る恐る「おむつなし育児」に挑戦したわたくし。最初はうまくおまるでオシッコをしてくれず諦めかけたのですが、それでも何となく続けていたら、あるときチーっとオシッコが出たのです! このときの爽快感というか、小さな感動といったら、なんでしょう。言葉の話せない赤ちゃんと排泄を通して意思疎通ができたようで、それから排泄のお世話が苦でなく、むしろすごく楽しいものになったのです。
なので今回、おまるの展示を見て、少しでも「おむつなし育児」をやってみようという人が増えたらいいなと思うのです。会場でおむつなし育児に興味を持った人は、会場の一角でホーローおまるを購入することもできます。おむつなし育児ってなに?どんな風にやったらいいの?という人には、分かりやすく「おむつなし育児」を紹介した冊子や冒頭で紹介した書籍も販売しているので、ぜひこちらを参考に。
「おむつなし育児は、環境にもすごくいいんです。布おむつなら、洗って何度も使えますし、紙おむつを併用していてもおまるで排泄ができれば、ゴミを減らすことができて、地球にも優しい。おむつなし育児はお母さんたちに限らず、広く一般の方にもっと知ってもらいたいと思っているので、年齢も性別も問わずいろいろな方に来て見てもらえたらいいですね」という西山さん。今後については、「全国各地のご当地おまるを作って、地方を盛り上げつつ、京都におまる美術館を作りたい。一番奥には、錫製のおまるを鎮座させたいんです(笑)」と、笑顔で話してくれました。西山さんの大いなる野望、ぜひいつか叶えてもらいたいと思います!
「おむつなし育児研究所京都サロン」では、
7/10(日)に「おむつなし育児&布おむつ祭」も開催!
こちらのイベントもぜひチェックしてみてください。
取材・執筆・撮影:江角悠子