メメントモリ・やりたいことは先延ばししない〜妹の命日に寄せて〜

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ブログやツイッターを通じて私を知る人は、私のことをフットワーク軽く、いろんな場所に積極的に行って、いろんな人に会ったりして、アクティブで元気な人という印象を持つ人が多い、ような気がする。

でも実際に、ブログより先に私に会う人からは「大人しそうな人」という印象を持たれることが多いのだけど。話すスピードも遅くて(おっとりしているとよく言われる)、顔も地味だしね。

で、最近、立て続けに「なんでそんなにアクティブに行動できるの?」と何人かに聞かれて改めて考えてみた。私は自分がアクティブに行動してるとは思っていないのだけど。でも、なんでかな?って振り返ったときにひとつ思ったのは、それはやっぱり妹が早くに死んだことが影響しているだろうなということ。

2学年下の妹は、私が23歳のときに交通事故で死んだ。まだ20歳だった。

妹が身をもって私に教えてくれたのは、人はいつか必ず死ぬんだという、この世の真理だった。

人はいつか死ぬ。そして、死ぬタイミングなんて、誰にも分からないのだと。

そのときから私はずーっと焦っている気がする。今、やりたいことをやっておかないと、明日死ぬかもしれない。現に妹は、夢を叶える途中で死んでしまった。

私には、あの日からずっと何かに追われているような感覚がある。気が休まらない。私のすぐ横には常に「死」が存在していると思う。

だから、いろんなことを「いつかね」と言って先送りにして、ダラダラと生きている人を見ると、腹が立つ。「いつまでも命があると思うなよ」と思う。チコちゃんの決めゼリフを叫んでやりたいくらいだ。

「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」

ずいぶん前に「メメントモリ」という言葉の意味を知ったとき、あぁ、これだ!と思った。メメントモリとは「自分が必ず死ぬことを忘れるな」、「死を思え」といった意味。これだ、私の中にずっとあるのは、メメントモリだ。

今、会いたい人に会いに行き、行きたいところに行かねば、私がいつ死ぬかなんて誰にもわからない。

妹とは結局クリスマス前に電話で話したのが最後になった。「年末、実家で会おうね」と言って。

妹と一緒に年越しをする予定だった1999年の大晦日、私はテレビ越しにミレニアムで大騒ぎする人たちを横目に、妹の初七日の片づけをしていた。妹と一緒に2000年を迎えられると思っていたのに、まさか妹のお葬式を終えて、初七日の片付けをしてるなんて、こんな地獄があるだろうか。

今年は念願のクルーズ旅行に行った。

船で世界一周することは私の夢で、老後に叶えようと思っていた。でも、気付いた。え、私、何歳まで生きるの? 老後って、あるの? そのときまで自分が生きてる確証なんて、なにもないのに。なんで人はやりたいことを先送りにしてしまうんだろう。いきなり世界一周は難しかったけど、1週間くらいなら行けた。これでちょっと後悔は減ったはず。

死ぬときに後悔したくない。

現世でやれることは、全部やっておきたい。

つい先日には、家族ぐるみで仲のよかった友人が、40代半ばという若さで突然亡くなった。優しくて、面白くて、人望厚く、私は彼のことが大好きだったのに。いつか一緒にハワイに行こうと言っていたのに、今年3月に会ったのが最後になってしまった。この世は、素晴らしい人からいなくなってしまう。

あぁ、やっぱり会いたいと思ったら会いに行き、行きたいところには行き、今やりたいことをやっておかないと。

メメントモリ。

うかうかしてる時間なんて、人生にないって思う。

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。