ある年の夏、友人と一緒に丹後半島へ1泊2日のキャンプへ行った。ワンボックスの大きい車1台に友達家族と独り身の男友達、うちの家族と合計7人。その日は快晴で、海も気持ちよく着いたら早速バーベキュー。子どもたちは海に入れて大喜びだし、青空の下で昼間っから飲むお酒はおいしいし、ジューシーなお肉がこれまた美味だし、とにかく何もいうことはない。
お腹を満たしたら、大人も本気で泳ごうということになり、テントは後で立てればいいから、とりあえず車に戻って残りの必要な荷物だけをおろして、みんなで海水浴を楽しむことにした。
丹後半島の海はとにかく澄んでいて、青く深く、その辺を魚が泳いでいるのだって間近に見える。ウニがいるのも見えるし、あの中にはサザエもいるのかもしれない。大人の楽しみはシュノーケリングで、子どもたちは浮き輪に入ってただひたすら波に漂って。
そうして楽しく過ごして、さて休憩しようと浜辺へ。友人が「車から出したいものがあるから、車のキーを貸して」と、たぶんそんなことだったと思うのだけど、ふと気づくと誰も車の鍵を持っていない。さっき車に戻ったとき鍵持ってたの誰だっけ? あぁ。えーと。私だ!私が鍵を閉めてその後どうしたんだっけ? 自分の行動をひとつずつさかのぼって思い出す。そうそう。キーを手に持って、それをそのままラッシュガードのポケットに突っ込んで、それから?
それから…!
そのまま海に入ったんじゃないの?!私!!!!!?
え? そのまま海に入ったってことは、鍵は? 慌ててラッシュガードのポケットに手を突っ込んでみる。浅いポケットの中に、当然鍵はなく、ということは、さっきまで大はしゃぎをして遊んでいた海のどこかということだ。
いくら丹後の海が澄んでいて、海の底まで見えるからといって、この広ーい海であの小さな鍵を見つけるのは至難の技だろう。いや絶対見つからない。
その日は浜辺に泊まって翌日帰るということになっていたのだけど、鍵がなけりゃ車に乗って帰ることもできないということだ。
いやでも!こんなときのJAF!JAFを呼んで鍵を開けてもらえばいいんじゃない?でも車の中に入れたとして、鍵がないことは変わらない。どどどどど、どうしたらいいのか、全くわからない。頭が真っ白。
とりあえず、レンタカーのお店に電話してみる。
鍵を失くしちゃったんですが、どうしたらいいですか?
予備の鍵はお店にあるので、取りに来てもらったらあります。鍵をなくされた場合は、1万5000円お支払いしていただく必要があります。(この鍵がまた特殊で、シンプルに鍵穴に差し込むタイプではなく、電子キーという繊細なやつで、それで弁償代もこんなにするのだ)
と、淡々と答えてもらうのだけど、「取りに来てもらったら」って、私たちがいるのは京都市内から高速に乗って3時間半も離れた丹後半島であって、みんなお酒飲んでるから、他の車で行くことも叶わないし、どどどどどうしたら? やっぱり分からない。
お酒の酔いなんてものは一気に引いて、血の気も引いた頭で必死に考える。こんなときは!困ったときのまきちゃん頼み。まきちゃんにレンタカーのお店に行ってもらって鍵を受けとってもらって、それを車に乗って持って来てもらったらいいんじゃ!?(人の迷惑顧みず、自分のことしか考えていない)
続く。
その(2)
その(3)
完結編