思っていることが伝わる表現の仕方〜映画「国宝」を観て考えたこと〜

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映画「国宝」を見てきた。

まわりの人が続々と観に行っているのをSNSで知り、すごいなぁと思っていた。なんせ映画は3時間もある超大作。3時間の映画を観ようと思ったら、前後の移動時間も含めて、(私の場合)少なくとも半日は空けないといけない。

つまり、半日の自由時間をあっさり確保できる。この映画を観に行った人たちは、そういう人たちなんだなと思った。自分がしたいと思ったことを、行動に移せる人。まずそれがすごいと思った。仕事に追われ、家事・育児に追われ…となっていたら、なかなか難しい。

が、私も行こ!と小さく決意して、半日確保して行ってきた。

これから見に行く人もいると思うのでネタバレしないように。印象的だった部分だけ書き出してみる。

映画のあらすじをざっくりと紹介すると、「任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた喜久雄の激動の人生を描いた人間ドラマ」である。

歌舞伎の所作や舞、セリフ回しなど、歌舞伎役者の子どもとして生まれていたら、小さな頃からたたき込まれていたはずのことを、喜久雄は大きくなってから学び直す訳なのだけど。

師匠でありベテランの歌舞伎役者である・渡辺謙が、喜久雄に指導する際、喜久雄の言うセリフに、「全然思いがこもっていない」と激怒するシーンが何度かあった。

喜久雄は女形を演じる訳だけど、その女形が抱える悲しみを、本当に感じて、セリフを言えと。もし本当にその深い悲しみを感じているなら、その「女」になっていれば、「そんな言いまわしにはならないはずだ」と。感じたからこそセリフに表れ出るものがあり、感じてもいないのに、ただ言葉にするのは嘘っぱちだ(という風に私は捉えた)。

後半、喜久雄が舞台で「曽根崎心中」を演じる。テーマが「心中」なので、相手を殺して自分も死のうとするシーンがあるのだけど、そこで本当に喜久雄が「人を殺そうとしている」ことが画面越しでも伝わってきて、恐怖を覚えるくらいだった。

この人は、舞台で役を演じているのではなく、マジで人を殺そうとしている。その手に持っている刀は、危険だから取り上げた方がいいんじゃないか?と心配になるくらいの殺意が、画面からにじみ出ていてヤバいと思った。

そのシーンにセリフはなかったけど、佇まいから表情から、この人は今、確実に人を殺そうとしているし、殺そうとは思っているけれど、恐怖や悲しみ、いろんな思いが入り交じり迷って葛藤している、そのすさまじさが伝わってきて、本当に息を飲んだ。

完全にその気持ちを感じきって、表現しているというか。思いを乗せるって、こうやるのか!と見せてもらったような感覚。

そんなシーンを見て、思いを乗せて演じることも、思いを乗せて文章を書くことも、同じなのかもしれないなぁと思った。やはり、その人の思いが乗った演技の方が心を打つし、思いが乗った文章の方が心に残る。圧倒的に伝わる。

そして、「思いを乗せて表現する」には、まずは自分の感情に気づき、次に、それをどう言葉にするかという技術が必要で。これは、演じることだけでなく、文章を書くことにも、まったく同じことが言えるなぁと映画を観ながらしみじみ感じた。

その思いを「本当に感じている」というのと、「感じたように伝える」ということはまた違っていて、技術が必要なんである。喜久雄が、「セリフに気持ちを乗せて言う」練習をひたすらしたように。

そしてその練習は、日常の中で、感情に耳を澄ましながら、丁寧に言葉にしてみることから始まるのかもしれない。

さて、そんな練習を、じっくりと積み重ねる場所として、【100日チャレンジ|わたしとつながる書くレッスン】もやってみたいなぁと思ったのでした。

日々の暮らしの中で、小さな感情の動きをすくい上げて、ノートに書いてみる。それを少人数のグループで共有しながら、少しずつ整えていく。

「気持ちがうまく言葉にならない」
「もっと“伝わる”文章を書きたい」
「書くことで、自分を整えたい」

そんな思いがある方に、この時間を届けられたらうれしいなぁと思います!


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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。