自分を好きじゃなかったら、生きられへんって思う。

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「自分を好きじゃなかったら、生きられへんって思う」とお風呂で娘が言った。

小2になる娘と一緒にお風呂に入っていたときのことだ。
その話は興味深い。何でそんなことを思ったのか気になって聞いてみた。

娘の友達はサッカーがとても上手で、娘はそれをすごいと思って「すごいね〜。上手だね〜」と伝えたという。でもそれに対して友達は、「私なんか、全然上手じゃないよ〜。娘ちゃんの方がうまいやん」と言うのだそう。

娘がどんなに友達をスゴイと言っても、いつも自分のことを否定する友達が娘には残念らしい。

娘はその友達に誘われて、昨年の秋からサッカーを習いはじめた。

娘は「たしかにわたしも上手だけど、●●ちゃんも上手だと思ったから言ったのに。それでいいのに。いつも自分のことは上手じゃないって言う」と不満そう(娘がちゃっかり自分のこともうまいと思っているところが面白い)

なんで自分のことを好きじゃなかったら、生きられないの?と聞いたら、もし泥棒とか犯罪を犯すなど、悪いことをしたら、自分のことを嫌いになって、最後は(自殺とかして)死んでしまうこともあるからと言う。ちゃんと自分のことを好きじゃないと、生きられなくなってしまうかもしれない。だから「自分を好きじゃなかったら、生きられへんって思う」という訳だ。

「わたしは、自分の絵が上手だと思っているから、他の人になんて言われても平気。わたしが上手だと思っておけばそれでいい」とも言っていた。だから、大好きな友達にもそんな風に思ってもらいたいのかなぁと思う。

自己肯定感の高さよ。

「娘ちゃんは、いつも自分の味方なんだね」と言ったら、当然と言わんばかりに鼻の穴を膨らませてうなづいた。

そんな風に自分が自分の一番の味方でいられたら、もうこの先何があっても、この人は強く生きていけるんじゃないだろうか。そう思ったら、うれしかった。親に散々叩かれて育って自己肯定感ゼロだった私から、こんな自己肯定感マックスの人が育ってくれて良かったなぁと思った。

虐待されて育ってきた私が、ちゃんと子育てできるのだろうか。私はずっと自分が怖かった。子育てをする自分のことが全く信じられなかった。子どもを叩くことは絶対にしない。でも、言葉で態度で、私がされて嫌だった、親の二の舞いのようなことをしてしまわないか、常に不安だった。私の親が私にしてきたようなことは絶対にしたくない。負の連鎖は私で断ちきるんだと思って、おびえながら子育てをしてきたけれど、もしかしたら私はもう大丈夫なのかもしれないと、このとき初めて思った。

それにしても、どうやってそんな自己肯定感マックスに育ったんだよ?と思って、「なんでそんな風に思ったの?」と娘に聞いてみた。

「全部、お母さんが教えてくれた」

全く想像だにしていなかった言葉に、私は膝から崩れ落ちそうになっていた(いや、しっかり湯船に浸かっていたけれど)。

私は何を教えてあげられていたのだろう。

分からない。

けれど、そんな風に言ってもらえるなんてと、ちょっと泣きそうになった。

毒親からの呪縛はもう解けているのか。

そろそろ私は「親としての自分」を肯定してあげてもいいのかなぁと思ったりした。

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。