大好きな作家の一人・山本文緒さん7年ぶりの新刊『自転しながら公転する』を購入。
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ちょっとした辞書のような厚みがあり、届いたときは「おおっ!」ってなった。これは読みごたえあり。週末にじっくり読もうと思っていたのに、昨日、寝る前にちょっとだけと…思って読みはじめたら、どうしてもやめられず、夜中の3時前までノンストップで一気に読んでしまった。
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物語の主人公は、32歳の与野都(みやこ)。2年前まで、東京でアパレルの正社員として働いていたが、更年期障害を抱える母親の看病のため、茨城県の実家に戻ってきた。今はアウトレットモールのショップで店員として契約で働いている。付き合い出した貫一は優しいけれど、勤めていたモールの回転寿司店が閉店となり就職もままならず、結婚するには経済的な不安がある…。
親の病気、介護問題、職場のセクハラや人間関係のややこしい問題、どっちつかず宙ぶらりんな自身の恋愛。何も考えず、気付かない振りをしていたら、平穏にそのまま過ぎていきそうな暮らしの中で、それでもそこに踏み入らなければと、イバラの道を行かざるを得ない都。
責任感が強くて、何でも抱え込んでしまう都が、私に似ている気がして「そうそう」って思ったり、「もっと肩の力抜いて適当にやればいいのに」って思ったり、歯がゆいけど、共感する部分が多いにあり、何とか幸せになってほしいなぁって願いながら読み進めていた。
後半、都がボランティアに行こうと思い立つシーンがある。
自分は社会の中で困っている人に対して何もしていない。お金も時間も全部自分が楽しむためだけに使っている。〜中略〜 やはり自分にはひとの痛みに寄り添う気持ちが欠けているのかもしれないと、都は背筋が寒くなった。
自分の体と時間とお金を使って、善なる行いをしてみたい。
この罪悪感、私も抱えている。痛いところを突かれたようだった。
著者自身が鬱病を体験しているからか、更年期障害の母親の、自分の気力とかではどうにもならないしんどさが、すごく生々しく伝わってきた。
ところで、物語の冒頭は結婚式のシーンから始まる。これに私はすっかりだまされてしまった。都と貫一は結婚するのか、別れたのか。その後を伝えるエピローグを読んだとき、混乱して何度も読み返した。最後の最後に「そういうことかー!!!」と判明する事実。
なんか見事にしてやられたな!と思う。まんまとやられたんだけど、妙に気分爽快で。書き下ろされたというプロローグとエピローグが、この構成が最高だなと思う。
読み終わったあと、なんかみんな、いろいろあってジタバタするけど「人生とはそんなもんだよね」って、全部肯定してもらえたような気がする。人が見たくない暗い部分も、うがった見方をせずそのまますくい取って見せてくれるような。で、思いきって見てみたら、案外怖くないなと思ったり。
山本文緒さんの見せてくれる世界がやっぱり好きだし、このお話は、私の好きな山本文緒ワールド全開だなぁって思った。
お話の続きもいつか読んでみたい。
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