【ライフエディターの役割】人はみんな自分の持つ「魅力」に無自覚すぎる

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京都のガイドブックの仕事をしていたので、ライターとして、いろいろなお店の取材をさせてもらってきた。これまでに名刺交換した枚数を数えると、1,500人以上の人に話を聞いてきたわけだけど、お店のオーナーさんと話してるといつも思う。

謙虚すぎる。

謙虚というか、自分のお店の魅力を自分でよく分かっていないことが多い。

メニュー1つとっても、じつは食材にこだわり抜いていたり、ものすごく手間ひまかかっていたりするのに、インタビューしても「特にこだわりはありません」とか言ったりする。

でもそれでは記事にならないので、根掘り葉掘り聞いてみると、実は自分で畑を持っていて無農薬で育てた野菜を毎朝採りに行って料理に使っているだとか。ソースは素材を3日間も煮込んだスープエキスを使っているとか。

料理が得意ではない私からすると、「え、そんなところからやってるんですか?」と思う。調理だけではなく、ついには野菜作りからやってしまうというのは、本当によく聞く。揚げ句に、畑の土作りにも手を出す。こだわりがすごい。

が、本人にとってはおいしい料理を作るために当然のことをしているので、特にこだわっているとは思っていない。普通のことである…ゆえに「特にこだわりはありません」という答えになる。

一番笑えない答えが、「こだわりがないことが、こだわりです」とか言っちゃう人だ。面倒くさい。

つまり、それが普通ではない、いかにすごいことであるかを自覚できていない。

京都ライター塾を受講してくれる人も、そんな人ばかりだ。「自分にはまだ足りないものがある」「書くことを学んでステップアップしよう」と、とても志の高い人が来てくれる。

でも私はここでも思う。自分の魅力を自分でよく分かっていない。

イラストが描けるのに、「こんなレベルでイラストレーターと名乗っていいか分からない」と言う(いや、私にはプロとの違いが分からない。めちゃうまい)。

英語が話せるのに、「英語なんてみんな話せるから」といって、強みとも思っていない(いや、私、外大卒業したのに話せませんけど)

ワードプレスでホームページが作れるのに「これくらいは誰でもできる程度のことなので」と言っちゃったりする。

なんか、もったいなさすぎて、横で聞いていたら腹立ってくるほどだ。聞きながら「はぁ?」と思うけれど、本人たちにとっては嫌みでも謙遜でもなく、普通に本気でそう思っている。

ここでは分かりやすい例を挙げてみたけれど、たとえば前職で教師をしていたとか、介護をしているとか、そういう経験もその人にしかない強みや魅力になると思う。

でも、そういう強みは自分ではなかなか気付けない。人から指摘されて初めて気付けることなのだと思う。もう、あまりに自然のことで、当たり前すぎて分からないのだ。

実際、たくさん取材されているお店は、インタビューされるごとにお店の魅力を言語化してもらっているから、自分のお店の魅力をよく分かっている。指摘されて、「そうか、これは普通じゃないんだ」と気付いて、自覚することでさらにその魅力が強化されていく。

京都ライター塾でも、ペアワークをすることで相手に指摘され初めて自覚したと言う人も多い。強みに気付くと、その活かし方が分かる、強みを上手く使えるようになるから、魅力が増す。

かくいう私も、自分の強みを全く分かっていなくて、「文章なんて誰でも書ける」と思っていた。コーチングやコンサルをしてもらって、ちょっとずつ「え、もしかして文章を書けるって当たり前じゃないの?」と気付いてから、人生が変わった。

大事なのは、もうすでにみんな「強み」や「魅力」を持っているということだ。あとは気付くだけ。気付いて自覚する。ライターはそういうのを見つけるのがうまいと思う。というか、見つけられないと良い記事は書けない。これも私の強みじゃないかと思う。

つまり、誰かが当たり前だと思って見過ごしている日常に、光を当てて「価値」に変える。

これはライターの技術であると同時に、その人の人生そのものを肯定する、いわば「人生を編集する(ライフエディター)」という作業そのものだと最近考えるようになってきた。ライターとしての20年を経て、私が今、一番やりたいこと。それは、単に文章を書く技術を教えることだけではなく、人生を編集する「ライフエディター」のような視点で関わっていくこと。

その人が気付いていない、眠っている「強み」や「魅力」を一緒に見つけて、それを一番輝く形で世の中に出していく。これからは、そんなお手伝いを、もっと力を入れてやっていきたいなぁと思っている。

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。