
京都でライターとして活動をしている江角悠子です。
この1〜2年ほどで、AIを使わない日はなくなりました。特に、私のいるライター業界では、「AIに仕事が奪われる」「ライターはいらなくなる」などと言われているようです。が、私はAIに原稿を書いてもらうことはしていません。世の中は「AIで執筆」ブームのようだけれど、私はちょっと違う。
「1文字も書かせない」のに、なぜAIを手放せないのか?
文章を書いてもらわないのに、AIを手放せないのはなぜなのか。それは、私にとってAIは文章作成の代わりをしてもらう「ゴーストライター」という役目ではなく、壁打ち相手として活用しているからです。最初は「AIを使うと、自分の考える力が落ちてしまうのでは…?」という迷いや不安がありました。
でも実際に使ってみると、AIをうまく活用することで、自分の書く力や考える力そのものがアップデートできたように感じています。一方で、文章の核になる部分や最終判断は、やはり人間の力が大事だとも思うのです。
この記事では、「ライターとして生成AIとどう向き合うか」にフォーカスした活用法を紹介していきます。ただ、「早く楽に」文章を書くためではない。書く力を伸ばしながら、文章の質を高めたい人へ。今年でライター歴20年となる私が、仕事でどんな風にAIを活用しているのか、紹介していきます。
※今回の記事は、アドビ社のPR企画「みんなのAI活用」に参加して執筆しています。
なぜ、私はAIに「執筆」させないのか
AIを使い始めた当初は、文章作成をしてもらうこともよくありました。ただ、何度かそうした使い方をするうちに、「自分で文章を書いた方が速いな」と気が付きました。AIが書いた文章を細々と直す方が、手間も時間もかかってしまうのです。
またAIが書いた文章には、インタビューで話を聞いたときの熱量が感じられないという理由もあります。現場での「温度感」は、まだまだAIには再現できない、当然のことながら。
私は現場で話を聞いたあとは、「このエピソードは絶対に入れたい!」「あのエピソードは省けそうだな」と、いろいろ考えながら原稿作成に取りかかります。けれど、インタビュー音源をAIに文字起こししてもらうと、どのエピソードも同じ熱量に、均一にならされてしまうのです。
そうすると、いざ記事にするときに、読者に何を一番に伝えたかったのか、かえって混乱し、迷ってしまう。AIが書くと、どれもが重要そうなエピソードに読めてしまうのです。
あと、AIはそのとき言った「言葉」しかまとめることができません。原稿を書くときには、「インタビューのときには言わなかったけれど、本当はこう思ったんだろうな」ということの方が重要だったりします。その言わなかった思いをくみ取って言葉にできるのは、やはりまだ人間だけ。AIは「言葉」を扱うのはうまいけれど、人は言葉以外の五感を使って原稿を書くことができます。
たとえば、あるパン屋さんを紹介する記事を書くなら、パン作りに対するこだわりについて話を聞きますが、実際に記事にするときは、聞いた話だけを書くのでは足りません。店内を満たす焼き立てパンの匂いや、ひっきりなしに訪れ楽しそうにパン選びをするお客様の様子、それに対する気持ちのいい接客など、まだ言葉になる前の段階のことにも目を向けて、テキストにして伝えるようにしています。
インタビュイーが話してくれたことだけをAIにまとめてもらうと、当然、すでに言葉になっていることしか、まとめてくれません。AIには、あの現場での「匂い」や「音」、目に見えない「温度感」までは言語化できないのです。その言葉にならない、五感で感じたことをいかに文字に乗せて読者に届けるか。まだ言葉になっていないことも言語化して届ける。それこそがプロとして文章を書くことだと思っているので、やはりまだまだAIに執筆してもらうことは難しいのではと思っています。
あと、これは知り合いのライターに聞いた話ですが、これは外せないと思ったエピソードを、AIが勝手に丸々省略して文字起こしをしていたケースもあったそうです。自分で音源を聞かずにAIに丸投げしていると、そうしたことも見逃しかねない。頼りすぎたり、使い方を誤ったりすると、クライアントからの信頼も失ってしまうことになるなと危機感を覚えました。
そうした理由のほか、私は「書く」楽しさをAIに奪われたくないとも考えています。インタビューをしていると、その場では分かったつもりになっていたことも、いざ文章で書こうとすると自分が理解できていなかったことに、初めて気付けたりする。表面をなぞっているだけでは気が付けないことに、書くことでようやく気付く。書くプロセスで思考が深まるのだと思います。それは「自分で書く」ことでしかたどり着けない過程であり、そこにたどり着くまでの過程や発見が楽しくて、私は日々書いています。この楽しさは、AIに明け渡したくはない。
そんな訳で、AIに文章の執筆をさせない私が、どんな風に活用しているかをここから紹介していきます!
ライター歴20年、江角悠子の「ゆるい」活用シーン3選
Xやスレッズを見ていると、AIで使えるいろいろな素晴らしいプロンプトを見かけます。興味があれば、それらを真似して取り入れたりはするけれど、私自身は大したプロンプトは使っていません(とてもじゃないけれど思いつかない)。AIに対して、たとえるならば、先輩や同業者の友人に相談するような感覚で質問しています。
使い方①【書く前】
膨大な資料の「下読み」をサポートしてもらう
1. 「要するに何?」を30秒で教えてくれる
インタビュー前に、クライアントから取材に関する膨大な資料を渡されることもあります。前提として知っておくべきことを把握しておかないと、突っ込んだ質問をすることもできないからです。その準備段階に活用するのが、「Acrobat AIアシスタント」です。す

AIアシスタントには「生成要約」という機能があり、PDFをアップロードすればワンクリックで要約をしてもらえます。さらに単に要約してもらうだけではなく、自分が求めるカタチ、たとえば「300字以内に要約して」「専門外の人にも分かるように要約して」といった細かな指定にも答えてくれます。
膨大な資料の内容をサクッとまとめてくれるので、まずは全体像を把握してから、必要なところだけをじっくり読むことができる。この「下読みのステップ」があると、資料を読む際のハードルも下がります。
何より安心できるのが、セキュリティ面です。お客さまから預かる大切な資料には、機密事項もあり、うっかり情報が漏れたといったことがあれば、信用問題にも関わってきます。ですが、Acrobat AIアシスタントは、アドビの厳格なセキュリティ基準で作られていて、読み込ませたデータがAIのトレーニングに勝手に使われたり、外に漏れたりすることがない。そうした安心感があるからこそ、活用できるなと思っています。
2. 「どこに書いてあったっけ?」を探さなくていい
実際に原稿を書くときにも、資料が膨大だと「〇〇の事例って、どこに書いてあったっけ?」と迷子になることがあります。そんなときに、「Acrobat AIアシスタント」が要約してくれたテキストを見れば、そのページへのリンク(引用元)が付いているので、元となる資料できちんと情報を確認することができる。

試しに私が仲間と一緒に作ったZINEの原稿PDFを読み込んでもらい、ZINEのタイトルである『READ&LOVE』の由来が書いてある箇所を質問してみました(右サイドバー)。
すると、該当箇所をテキストで抜き出してくれ、数字を併記。その数字をクリックすると該当ページに飛ぶようになっています。
ライターにとって「ファクトチェック」は重要で、資料と突き合わせて確認できることで、AIが勝手に創作していないことも確認できますし、これまた安心感があります。

また、160ページ近い膨大な原稿の内容もしっかりと要約してくれています。これは、資料の内容を素早く理解するとき、また、原稿を書くときなどにも、大いに活用できそうです。
3.クライアントの「文脈」を深く知る
商業ライターとして原稿を仕上げる際に大事なのが、クライアントの求める原稿を書くこと。その際に私は、媒体の過去記事や公式サイトを読み込み、自分なりに分解、研究しています。メディア特有の文体(文章のテンションと私は呼んでいます)や、「トーン&マナー」や「頻出語句」を研究して、原稿に反映するのです。
たとえば、ですます調で穏やかな文体を基本としている媒体に、煽り・急かすような表現、「絶対」「最強」「爆売れ」といったセンセーショナルな言葉を使った原稿を提出してしまうと、なかなかOKはもらえないと思います。そういったズレがないように、これまでは過去記事をいくつも読んで研究していたのですが、そうした媒体研究も、最近はAIがやってくれます。
私がよく活用しているAIは、
ChatGPT
Claude
Gemini
の3つ。
それぞれに得意・不得意があるように感じているので、場合によって使い分けています。クライアント特有の「言い回しの癖」や「読後感」を分析してもらうなら、Claudeが一番的を射ている感じがします。試しに私の大好きな媒体「天然生活」を例にとって、分析してもらいました。
プロンプトは、シンプルに、サイトのURL(https://tennenseikatsu.jp/)のほか、ここで記事を書くならどういうことに気を付けたらいい?といったことや、「言い回しの癖」や「読後感」を分析して、と聞いてみました。友だちに相談するような感覚で。

これだけでは、文章にどう落とし込めばいいのか分からなかったので、もう一度質問をしてみました。

ここまでヒントをもらえると、原稿を書くときにも迷いが減ります。
媒体の「頻出語句」や「禁止用語」を表形式でまとめてもらうなら、ChatGPTが強い。ここでも「天然生活」を例に、頻出語句を聞いてみました。

このリストがあれば、ちょっとした表現に迷ったときにも参考にできそうです。類語も載っているので、言い回しに工夫ができるというメリットも。
Geminiは、Googleと連携している強みがあるので、公式サイトのURLを直接投げ込んで「今、この会社が推している空気感」をネットから拾ってきてもらいます。情報の鮮度が良い。

こうした媒体の傾向が掴めたら、企画を持ち込みたいと思ったときにも、戦略的に提案できそうです。
4.構成案の「穴」を見つけてもらう
原稿を書く前には、ざっくりとした構成を考えますが、その自分で立てた構成案をAIにぶつけ、「読者が疑問に思うポイントは?」「足りない視点は?」と質問して、ブラッシュアップすることにも活用しています。
使い方②【書いた後】
文章の「純度」を高めるために使う
ここからは原稿を書いたあとのAI活用法。
1.「最初の読者」としての感想を聞く
本文は自分で書きあげ、その後の「磨き上げ」にAIを活用しています。これまたプロンプトというほどのことでもないのですが、書いた原稿をAIに投げ込んで、「これ読んで、感想聞かせて」と質問するだけ。「ここは分かりにくいかも」という指摘や、こんな締めにするのもありといった提案に、「あ、確かに!」と気づくこともよくあります。
ここでもChatGPT、Claude、Geminiを活用しています。
それぞれに同じ文章を読ませて感想をもらい、一番自分にフィットする答えを採用しています。もしくは、同じ文章を読ませてもわりと違う感想をくれるので、それぞれが出してきた答えのいいところ取りをしています。ChatGPTはやたらと褒めるので、「厳しく添削して」など、追加で注文することも多いです。
ただ、「公開前の原稿」や「クライアントの秘匿情報」をAIに読み込ませると、それがAIの知識として蓄積され、巡り巡って他の誰かへの回答に使われてしまう可能性はゼロではありません。
アドビのAIが他のチャットAIと決定的に違うのは、「企業の信頼」を売りにしている点。
先ほどもお伝えしたように、「Acrobat AIアシスタント」に読み込ませたドキュメントの内容は、アドビのAIモデルのトレーニングには使用されません。法人利用を前提とした厳格なセキュリティ基準で作られているので、安心して「公開前の原稿」を添削してもらえます。
ただクライアント仕事ではない、毎日配信している私のメルマガの原稿やnoteの記事などは、ChatGPTやClaude、Geminiにそれぞれ感想を聞きながら、ブラッシュアップしています。読者が読んだらどんな風に感じるのか?というのは、書き手として一番気になるところなので、この「感想を聞く」という使い方が一番重宝しているかもしれません。AIなら、忖度することなく答えてくれるだろうという安心感があります。
2.「校正・校閲」をしてもらう
書いたあとの推敲として、表記揺れ、誤字脱字、ファクトチェック(出典の確認)なども最近はAIを活用しています。実はアドビのAIアシスタントは、PDFだけではなく、Wordデータもそのまま読み込んでくれるのです(ただし、自動的にPDFに変換して処理されます)。表記揺れなどの箇所もリンクで示してくれるため、長文でもひとつ一つ探す手間が省けます。
3.資料のスライドを作ったあとにイベント案内・告知文を作成してもらう
原稿からは少し離れますが、たとえば公開した記事をAIに読み込ませて、記事をベースに、SNS(FacebookやInstagram)に投稿する紹介文を作ってもらうこともあります。
「思わず記事が読みたくなるような、キャッチーな見出しを3パターン作って」と聞いてみたり、単発イベントや講座を開催するときは、「イベントに申し込みたくなるような、タイトル案を10個出して」といったことを聞くことも。その際は、イベントや講座で使うスライドの「中身」を読み込んでもらい、そこからズレない正確な案内文を生成してもらうようにしています。
そのほか、講義用のスライドの中から、特に受講生の心に刺さりそうな「名言」や「核心部分」を抽出してもらうことも。「この資料の中で、一番みんなに知ってほしいポイントを3つ抜き出して」とリストアップしてもらうと、「そうか、私が一番伝えたかったことは、やっぱりそこだ」と改めて、講義で話すべきことが明確になります。
試しに、アドビのAIアシスタントを使って、私が主宰する「京都ライター塾」の講義資料から、ポイントを抜き出してもらいました。

AIとキャッチボールをすることで、深掘りする、言葉遊びを楽しんでいる、といった感覚があります。この「どんな質問を投げかけるか?」がAIを活用する際に重要になってくると思っているのですが、「Acrobat AIアシスタント」では、質問例も挙げてくれるのが、ChatGPTやClaude、Geminiとは大きく違う点だなと感じています。
4.LP(告知ページ)のリード文
私が少し苦手意識を感じているのが、マーケティング的な考え方や戦略。そこで、イベントの申し込みページなどで使う「こんな悩みがある人に届いてほしい」というターゲットへの呼びかけや、「この講義を受けると、こうなれる」というベネフィットの整理は、AIに手伝ってもらっています。これらを、スライドのPDFから自動で書き起こしてもらうと、そこが売りになるのか!と自分でも目からウロコ。AIから教えてもらうことも多々あります。
使い方③【迷った時】
「選択肢」の候補を挙げてもらう
あとは、表現の引き出しを広げる「類語辞典」としても活用しています。本文を投げてタイトル案や、言い回しのバリエーションをいくつか出してもらう。「タイトルは全部ボツだけど、3番目に登場したキーワードは使える!」という、いいとこ取り。知り合いのライターさんは、「あえてAIの作ったタイトルを使わない」という人もいました。斬新だけど確かにそういう使い方もできそうだと思いました。AIが出してくるタイトルは、とにかく「ベタ」という傾向がある。よくあるパターンのキーワードを省けば、また違った角度からのタイトルがつけられる。そのヒントになるなと感心したのでした。
そのほか書き上げた初稿を読み込ませ、「設定したターゲットに刺さるか?」「結論への導線はスムーズか?」を客観的に評価してもらったり、いい締めが思いつかないときは、アドバイスしてもらうことも。「もっと柔らかく」「もっと信頼感のある専門家風に」など、ニュアンスのバリエーションを伝えて提案してもらい、自分の感性に合うものを選んでいます。
ここで重要なのが、AIの言いなりにならないこと。
最近ライターとして仕事を始めたという人から、こんな相談を受けました。AIの提案通りに直した方がいいのか、自分が書いた文章のままでもいいのか判断に迷う、と。こんなとき、ふだんから「自分の言葉で書く」ことをしていると、悩むことも少ないと思います。自分の言葉で書く感覚が分かっているから、AIが提案する言葉の「違和感」に気が付けるし、自分でも直せる。まだ文章を書き慣れていない人が、「0→1」の部分をAIに任せてしまっていると、ここの部分が育たなくなるのではないかと、ちょっと危惧しています。本当に伝えたいことは、何なのか?読者は単にきれいに整った文章が読みたいわけじゃないと思うのです。
3. 私がAIに投げる、唯一の「魔法のプロンプト(?)」
文章を書く前に、記事のゴール設定をしておくのですが、私がよく使う質問が、「マーケティング的にどう?」です。自分の文章を客観的に「ビジネス」の視点で見直しています。
難しい指示(プロンプト)はよく分からないし、マーケティングにも詳しくないので、だいぶざっくりとした質問なのですが、これでもほしい答えをもらえているので、私は満足しています。友達や仕事のパートナーに相談するように、普通の言葉で聞いています。尊敬するマーケターの名前を挙げて、あの人ならどんな意見をくれると思う?などと聞いています。コンサルの人と同じような意見をくれることもあり、思いもしなかったアイデアをたくさん出してくれるので、視野が広がります。
4. まとめ
AIは「時短」のためではなく、「より届ける」ために使う
いろいろな活用方法を挙げてきましたが、商業ライターが本来やるべきは、ただ文章を書くことではなく、その先にいる読者に言葉を「届ける」ことのはず。だからこそ、膨大な資料の下読みや、客観的な視点でのチェック、さらにはSNSでの告知文づくりなど、「届ける精度」を上げるためのプロセスをAIに手伝ってもらっています。
これまで、そこで使っていた労力を省けるようになったおかげで、もっと本質的に私のやりたかった「書く」ことに集中できるようになった感覚はあります。
AIがあるからこそ、私は人間にしかできない「感性の仕事」に全力を注ぐことができる。AIに書かせると爆速かもしれないけれど、そんなのはつまらない。自分で悩みながら言葉を紡ぐ醍醐味を味わいたい。AIとゆるく、賢く役割分担をしながら、「書く」というライターとして一番「おいしいところ」を堪能していきたい。それが、AI時代に私が選んだ仕事のやり方です。
今回、アドビさんにこの記事を書くきっかけをいただき、書くことで改めてAIとの付き合い方について言語化することができました。ありがとうございます。記事で紹介した「Acrobat AIアシスタント」は、回数制限はありますが、無料でも試せます。興味がある方はぜひ使ってみてください!

