子を亡くした親と兄を亡くした姉弟の1日…映画「歩いても歩いても」

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4月6日まで取材の予定がない。取材に行った原稿はもうぜんぶ書いた。
連載の入稿も昨日完了した。急ぎの仕事もない。

ぽっかり空いたこの1日を、神様がくれたお休みだと思って、
今日は1月に行った、グリーフケアの講演で紹介されていた映画(DVD)を見ました。
2008年公開、是枝監督の「歩いても歩いても」

映画の中では大きな事件は何も起こらない。
ただ、ある家族の、夏の1日を切り取っただけの映画なのだけど。
その1日というのは、15年前に亡くなった横山家の長男の命日。
両親の家に、娘家族と弟家族がやってきて…というお話。

娘と年老いたお母さんの何気ない会話、
お母さんが久しぶりに会う子や孫のために作る料理、
古くなった実家の台所、
死んだお兄さんのもので溢れた部屋。

子らの両親に対する思い、
親が子に思うこと。

淡々とその1日を描いているだけなのだけど、
その一つひとつがなんというか、しみじみ胸に染みて、
なんということもない会話一つで泣ける。

お母さんは、亡くなった長男のことを会話の端々に登場させる。
純平はね、こうだったの。こんなこと言って、こんなことしてたわね、と。
でも、弟が発言したことが、お兄さんが言ったことになっていたり、
思い出さえも兄中心にすり替わっていて、
今、もう一人の息子は生きて、目の前にいるのに、意識は死んだ兄のことばかり。

部屋にふいに迷い込んできたチョウチョを見つけた母親が
「このチョウチョは純平よ、お墓から着いてきたんだわ」って言ったり。

そして、その一言一言に、静かに傷つく弟。

でも悲しいだけじゃなくて、幸せな空気も感じられて、
あぁ、家族っていいなっていうのもすごく思った。

お母さんが作るご飯、それを囲んでみんなで食べる時間、
なんてことない会話がすごく幸せなことなんだなぁって。
いつまでも続くかのように思える何気ない日常が、
本当は限りがあって、すごく大切な時間なんだって。

映画の中で、答えは出してくれなくて、そのまんま、
事実をそのまんま突き付けられておしまいという印象だったけど、
それが人生なのかもなぁと思ったり。

なんだか漠然とした曖昧でよく分からない感想かもしれませんが。
全然うまく書けない。

子を亡くした親がこの映画を見たら、自分がまわりにどう映っているのか、
生き残った子がどんな感情を抱いているのか、客観的に見られるかもしれない。

 

歩いても歩いても [DVD]
阿部寛
バンダイビジュアル
2009-01-23

 

もう一つ、講演内で紹介していたこちらの映画もまた見てみたい。

岸辺の旅 [DVD]
深津絵里
ポニーキャニオン
2016-04-20

 

岸辺の旅 (文春文庫)
湯本 香樹実
文藝春秋
2012-08-03

 

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。