書くことを仕事にしたい人のためのライター塾
「書くを仕事に!京都ライター塾」を主宰する
フリーライター歴14年の江角悠子です。
2020年1月に初めてブックライティングをした本「亡くなった人と話しませんか」が出版されました!
[itemlink post_id=”21699″]
ブックライティングとは、著者に代わって一冊の本の文章を書くこと。いわゆる「ゴーストライター」です。ゴーストライターの場合、執筆したことはなかなか表に出せない現状があったかと思いますが、ライターの上阪徹さんが新たに「ブックライター」というネーミングを付けてくれたことで、完全なる裏方から、表に出て評価される「書き手」になれたのではないかと私は思っています(ライターの端くれとして、この地位向上をとてもうれしく思う)
そして今回初めて、一冊まるまる執筆をしてみて感じたのが、本を書くことの大変さ!!!脳の使う部分が、短い文章を書くときとはまったく違っていて、慣れていたはずの文章を書く作業も思ったように進まず、本当に苦労しました(結果、書き終えるのに2年という時間がかかってしまった…!)。
本を読むのは簡単なのに、書くのがこんなにも難しかったとは!すらすら読めてしまう文章の裏にある苦悩を知り、以降、本を読むときのありがたさが格段に増しました。身を削るような大変な思いをして、本を書いてくださって、ありがとうございます! すごいなぁ、ありがたいなぁとしみじみ感謝しながら読んでいます。
さて、ブックライティングの作業を0〜10まで通してやって初めて「こうすればよかったのか!」という気付きがたくさんありました。今後ブックライティングの仕事を増やしていきたいので、いつかまた書くであろう私のために、忘れないうちに書き残しておきます。
これからブックライティングをやってみたいという方にも参考になるように。ただ、まだ1冊書いただけなので、本当に超・初心者向けになると思いますが。では。
ブックライティングの流れ
企画を通す
今回の「亡くなった人と話しませんか」の本に関しては、編集者の方が偶然私のブログ(2016年12月26日の記事)を読んで、企画を立ててくれました(2017年4月にメールをもらう)。
それを社内の企画会議にあげ通ったので(2017年7月)、ここで本を出すことが決定。
構成案の作成
本の仮タイトルは「亡くなった人と話しませんか」。メインテーマは「人がハッピーに生きるにはどうしたらいいか」「亡くなった人が忘れられないときの、自分との折り合いのつけ方」と決まり、これを元に、編集者とともに、著者に何を聞くべきかインタビューの準備を進めていく。
著者インタビュー(取材)
5時間×2日間かけて著者にインタビュー。
個室のあるカフェを借りて、静かで、落ち着いて話しを聞ける環境を意識しました。
東京から編集者が来てくれて2日間インタビューにも同席してもらう。足りない質問を補ってくれたり、私が分かったつもりになって進もうとするところを深堀してもらうなど、すごく安心感があった。
インタビュー後に、印税の話をしてもらう。ちなみに印税の計算の仕方は
本の価格 ×部数 × 印税率
で出せます。
今回、本の価格が1,300円×8万部×もし印税率10%だったなら…
実に、1,000万円以上の印税が入ってくることになったのですね〜。夢が広がる(笑)
とはいえ、この時点でどのくらいの部数を印刷するかも未定、ましてやどのくらい売れるかなんて想像もつかないので、印税率の話しをしてもらっても、全然ピンと来ませんでした。
テープ起こし
インタビューが終わったらテープ起こしをして、インタビューの内容を全て文字にする。テープ起こしを誰かに依頼するとお金がかかってしまうので、自分でやろうと思いつつ時間がなく、半年後に諦めてようやく業者に依頼。
テープ起こし費用にかかった費用は10万円ほど(自腹)。
約12時間分のテープ起こしをした原稿をプリントアウトすると、404ページにもなった!その原稿を読み込み、何が書かれているのか全体を把握し、前後で似たようなテーマがあれば、付箋で色分けをしておく。
全体を通して読み終わったあと、どんな流れの本にするのか当初の構成案をベースに目次を作り、章だてをする。(原稿を書いていく中で内容が少しずつ変わり、また前後するので、その度にバージョンアップして目次は最終的に第4弾まで進化)
執筆
ここからようやく執筆作業。
章の中の原稿を一つづ書いていく。最初は「10万字も書かないといけないのか!」と圧倒され、おじけづいていたのが、一つずつ項目を見てみると、文章は長くても、1,000〜3,000文字程度。これなら短いインタビュー記事と同じようなボリュームなので、とにかく「その章の文章を書くことに集中すれば大丈夫」と考えることで、ようやく書き出せた。まさに千里の道も一歩から。
文体の確認
今回、私はブックライティングが初めてということもあり、どんな文体で文章を書きすすめたらいいのか、編集者さんに確認してもらうために、第1章だけを書いて確認してもらっていた。
校正してもらったものが残っていたのだけど、最初の文章は酷かった…。
「あり得ないほどカブリが多いです」
「話し言葉をそのまま書くのはNG」
「リズムが悪い」
「普通で面白くない」
「分かりづらいです」
「この文章要りますか?必要性を感じません」
と今見直しても散々だ。朱を入れる方が大変だな。
でも、最初にダメなところを全部伝えてもらっていたおかげで、このあと書く文章はそれらをすべて意識して書くことができたので、よかった。一気に書き上げたあとの大幅な修正はなく済んだ。
執筆の進み具合を記録する
ブックライティングの仕事はゴールまでが果てしなく長く遠く、なかなか達成感が得られないので、本当にしんどい。夜寝る前に「あぁ、原稿書かねば…でも今日も書けなかった、どうしよう」とか思って、胸が締めつけられるという苦しさを何度も味わった。
あるとき小説家・寒竹泉美さんのワークショップで、「執筆の進み具合を記録している」と知り、さっそく取り入れる。
書いた記録を残すことで、1日にどのくらい書けたのか、たとえどんなに少なくても、少しずつでも前に進んでいることが分かると、心が落ち着いた。ちょっとでも前に進んでいるという実感は救い。
このときは1日3,000字を目標に書いていた。でも1日に書けた文字数を見ると、1,000文字とか、少ないときは1日63文字って…Twitterのつぶやき程度しか書けていない(書いたり消したりしている)。
本1冊分の文字数はざっくり10万字ほど。ふだんのインタビュー原稿であれば、5,000字なら1日もあれば十分書けるといったスピード感である。ならば、10万字の原稿だって、1日に5,000字書けば、20日で書き終えることができるではないか。と単純計算をしたのだが、初心者の私、現実はそうはいかなかった。
推敲
推敲するときに意識したのは、文章のリズムと呼吸。声に出して読むとよく分かるのだけど(これも編集者さんに教えてもらった)、リズムの悪い文章は、頭に入ってこない。読んでいてつっかかる箇所を直していった。
編集者さんに推敲をする際は「原稿を送っていただく前に、必ず10日ほど寝かせて(文章をいっさい見ないで)から読み返し、修正してくださいね。そうすればかぶりの文章をカットできるはずなので」と教えてもらう。が、提出しますといった日時まで時間がなく、書くときより全然時間が取れないまま慌てて確認して提出。結果、文字の打ち間違いがあって、ライターとしてあってはならないこと、残念でしたと言われて、「まったくもって、そうですよね」と反論のしようもなく、悲しい気持ち。次からは推敲にもしっかり時間を取りたい。
校正
原稿を編集者さんに送ると、校正してもらい、整えられたゲラが送られてくる。最初は1〜7章まであったのが、「ここはない方がいいのではないか」ということで1章分まるまる削除されることになり切なくなるも、一番いい形で届けるためには必要なこと。
バッサリ削るのは書き手だとなかなか判断しづらいことでも、客観的に判断してくれる編集者さんがいてくれるというのは本当に心強い。
パソコンの画面で文章を読むのと、紙にきれいに整えられた状態で読むのとでは、印象がまた違う。分かりにくいところはないか、文字間違いがないか、何度か読み直し→修正というのを2〜3度繰り返したのち、最後に「あとがき」を書いて、私のブックライティングの仕事は完了。
発売日決定!
[itemlink post_id=”21699″]
9月末にいったん原稿を書き終えてから、3ヵ月。1月9日に発売が決定!
新聞の広告欄でも取り上げてもらい、あっという間に増刷!本を出すまでが本当に長かったけど、報われた!!!人生で一度は経験したかった、重版の喜びを味わうことができたのでした(ありがとうございます!)
未来の私へ。次またブックライティングをするときの心構え
●仕事が決まったら、それ以外のお仕事は諦めて、ブックライティングの仕事だけをするように。
●何をおいてもまずインタビューが終わり次第、テープ起こしを依頼して、文字にしてもらうこと!自分でしようとするな。苦手なので、絶対にしない。
●このことを絶対に伝えたい!この言葉を必要としている人がいる!と思える本以外、請けないように。よっぽど思い入れがないとブックライティングの仕事はしんどい。お金ではない。
以上!
またいつか、ブックライティングのお仕事ができますように!