「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」へ行ってきた!暗闇の心地よさにハマる。

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先日、夫と息子と3人で「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験してきました。
ダイアログ・イン・ザ・ダークとは、サイトによると

参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、グループを組んで入り、
暗闇のエキスパートである視覚障がい者のアテンドにより、
中を探検し、様々なシーンを体験します。
その過程で視覚以外の様々な感覚の可能性と心地よさに気づき、
コミュニケーションの大切さ、人のあたたかさなどを思い出します。

これまで、全世界39カ国、130都市以上で開催され、2015年現在で
800万人を超える人々が体験したこのイベントは、1988年にドイツで、
哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれました。
日本では1999年11月に初めて開催され、現在は東京・外苑前の会場と
大阪「対話のある家」を中心に開催中。これまで17万人以上が体験しています。

という「暗闇のソーシャルエンターテインメント」です。

私はこれが東京にオープンしたときから行きたくて、
これを体験したいがために東京へ行こうかと思ったくらい興味があり、
グランフロント大阪にもできた!と思ったら、行きたいなと思ったタイミングが
妊婦のときで(妊婦さんは参加できません)、
何年越しかの夢がようやく叶ったのです!!!

夫は私がいくら誘っても全く興味を持たず、
私が申し込んだから仕方なくという感じで着いてきました(息子も同様)

いざ、ダイアログ・イン・ザ・ダークを体験!

会場に着くと、まずカバンや携帯などの手荷物は全部ロッカーに預けます。
そしてちょっとだけ暗めの部屋に通されて説明を受けます。
参加者は全員で6人。私たち以外は皆さん他人の全く初めて会う人たち。

最初の説明が終わると、この日ガイドをしてくれる
視覚障害の人がいる部屋に移動します。
そこで暗闇で過ごすときの注意点をお話してもらいます。

・白杖を活用すること
・何かモノを触るときは手の甲を先に当てること
・自分のしていることを声に出して周りの人に伝えること

そして、暗闇の中で助けとなってくれる白杖を受け取ります。
身長によって使いやすい長さがあり、息子は短めの白杖を。

お話が終わるとライトを消して、いよいよ真っ暗闇の世界へ。
ドキドキワクワクはちょっとで、ただもう不安。
ガイドさんが「真っ暗になりましたか?」と確認します。
そうか、ガイドさんは始めから真っ暗なんだなと改めて。

純度100%の暗闇

ここから先は何を体験したのか、ネタバレになりますが、
知識として知っていることと、体験することは全く違うということが
今回のことでよーく分かったので、気にせず書こうと思います。

「暗闇に目が慣れてくる」とはいうけれど、このとき体験した暗闇では目が慣れることはなく
どんなに目を凝らしても何にも見えない。これほどの暗闇を体験するというのは
もう母親のお腹の中にいたときくらいじゃないかという位に、一筋の明かりさえも見えない。

終わってから夫が「目を凝らしたら、もしかしたら何か見えるんじゃないかと思って、
目を見開いてた」とかって言ってて笑う。案の定どうやっても、何も見えなかったって。

ガイドさんが「さぁ、こっちですよ」と声を掛けてくれるけれど、
さっきまで横にいたはずの夫が今はどこにいるのか、どっちへ進めばいいのか?
恐る恐る声がする方へ足を引きずるようにして歩きます。

参加者みんな足がすくんでいるのか、お団子のように固まって全然前に進みません。
ぶつかり合いながら、ドアの向こうに進みます。
「ドアを抜けたら左に曲がってくださいね」って言われるんだけど、
なんかもう、方向感覚が全然つかめない。不安だけが増す(笑)

暗闇では誰が何をしているのか分からないので、まずは自己紹介。
そして行動をするときは、まず自分の名前を言ってから、動きを伝える。
私の場合「エズ(私のあだ名)、座りまーす」といった感じ。

自己紹介が終わると、玄関で靴を脱いで、廊下を進み部屋に入ります。
と書くと簡単だけど、何も見えない世界で、ここはどんな玄関なのか?
段差はどのくらいなのか、玄関からどっちの方向に廊下があるかが一切分からない。

廊下を進んだ先も、果たしてどんな部屋なのか?
私は無造作に歩いて、何かに足をぶつけました。なになに?
しゃがんでその形のものを手で触って、初めて円卓だと分かりました。

このあと、テーブルを囲んでみんなでお茶をするのですが、
部屋にはもう1人視覚障害のガイドさんがいて、リンゴジュースや紅茶を出してくれるのです。
暗闇でグラスにジュースを入れる。って怖くないですか?こぼれそうじゃないですか?
熱いお湯を使う紅茶をなんて、火傷をしないだろうか。
でもガイドさんはそれができるんです、暗闇でも。
視覚障害の人にとってはそれが当たり前の世界で、
そういう世界で生きているのだなぁと思ったら、すごく不思議な気持ちになったのでした。

「どうやってジュースを入れるんですか?」
って質問した私があとからすごく恥ずかしくなって、
目の見えない人を馬鹿にしたことになるんじゃないかってすごく申し訳ない気持ちに。

暗闇で飲むアップルティー。ま、味は普通だったんですけど(笑)
ものすごく癒されたんです。心が落ち着くというか
邪魔なものが何にも見えない、余計なものが見えない世界で
こんなにも心が解放されるんだなぁって。

普段は目からいろんな情報を仕入れているけど、
要らないものまで見えているのかもしれない。

普段は人見知りで人前ではあんまり話さない息子が、
この日は家で過ごしているように好きにおしゃべりしてて、
これも暗闇のなせる業かなと思ったり。
人の顔が見えないと、文字通り「顔色をうかがう」っていうことをしなくていい(できない)から
すごく気が楽なんですよ。すごーく。

そして、その後テーブルで明日の参加者に向けてメッセージカードを書きました。
暗闇だと、どこにペンがあるのか、どこにカードがあるのかに始まり、
文字を書いても、どんな風に書けているのか?全く見えません。

見えないもどかしさ。

この画像のカードは、前日の参加者が作成したもの。

シールが張ってあったり、ハサミで切り抜いてあったり、
このカードのすごさは暗闇でカードを作った人にしか分からないと思うんだけど、
あの暗闇でこんなに凝ったカードが作れるなんて本当にすごい。
私はシールをペタッと張ったくらいのしょぼいカードで、
工夫のかけらもなく、ホント申し訳ない。

暗闇でもいろんなことができるんだなっていうのが分かったのと、
普段、いかに視覚に頼っていてそのほかの感覚を生かせてないのか
というのがよーく分かりました。

あと、人とコミュニケ―ションをとる楽しさ。
見えないから、声に出して言うしかないんですよ、ペンはどこにありますか?
どこに座ったら座布団がありますか? ここには段差がありますよ、
ここ壁があるから気を付けてくださいねって。
その声が聴こえるとすごく安心して、見えない中でもホッと一息つけるんです。

終わった後、なんだか胸がいっぱいになって涙がこぼれそうになりました。
感動の涙なのか、光のある世界に戻れた安心感なのか分からないけど、
ぐっと胸に来るものがあった。

行く前はダイアログ・イン・ザ・ダークに全く興味のなかった夫が、
その日早速両親や兄弟にも「一度は行った方がいいよ」と勧めていて、
翌日には仕事仲間にもその話をしたっていうのだから、
ほらね!行って良かったでしょう!と私は言いたい(笑)

息子は純粋に「楽しかった!」と言っていて、
あのあとも何度となく家族の間で暗闇の話になって、
何か感じてくれたところがあるのだなぁ、連れて行って良かったなぁと思います。

今度は一人で参加してみようかな。

こちらの記事、イラスト入りで内容が紹介していて面白いのでぜひ!
【暗闇で解放される心と五感】
「助けて」と言えないあなたに「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を勧めたい

東京版も行ってみたいなー。

その後、取材も行ってきました!


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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。