「映画、見たしな」と思って、映画の復習という感じで読み始めたのだけど、
これが全然違って、映画に描かれていないシーンがたくさんあって、すごくよかった。
ちびちび読み進めようと思っていたのに、面白すぎて途中で止められず
もう仕方ないと腹を決めて、仕事そっちのけで今日一気に読み終えてしまった。
西川美和さんの書く文章にぐいぐい引き込まれて、こまかく的確な描写のおかげで
衣笠幸夫の口ぶりがもう衣笠幸夫でしかなく
あぁ、こんな嫌な言い回ししそうだなと思いながら。
映画で私が理解しきれなかった部分や、モっくんの奥さん、
深津絵里側や子ども側の心理も書かれていて、そうかそうかと思うことが盛りだくさん。
改めて良かった。
映画を見て配役が分かっているので、本を読み進めるほどに
脳内で役者が台詞を言い、動き回り、演じてくれ、
なんだか本を読み終わった後は、番外編の映画をもう一本見たかのような感覚になったのでした。
西川さんはこれだけの素晴らしい文章も書けて、かつ映像も撮れて、
本当にものすごい才能だなぁと心底感動。
西川さんが監督だったからこそあの映像が撮れたのだなぁと思ったり。
文章で、平面にしか表現されていない衣笠幸夫を、
映像で、立体的に表現したモっくんもすごいなと思ったり。
細かいところまで描かれている小説の方が物語に深く入り込めるのか、
いや、入り込み過ぎて、母親を亡くした子の立ち行かない暮らしぶりを読むにつけ
暗い気持ちになりつつ、ふと現実に戻って、能天気なうちの子たちを見て、
今この目の前の幸せをかみしめておこうと思ったりしたのでした。
映画を見て私がすごく印象的に思った、
モっくんや子たちの髪がぼさぼさになっていく様子というのは小説からは伝わってこず、
映画だからこそ表現できることだったのだなぁと思うと同時に
一方で、小説だからこそ伝わってくる良さもあって、
よく原作を知ってて映画を見たら失望したとかあるけれど、
この作品はきっとそんなことはないと思う(私は逆だったけど)
今回、そのどちらの良さも際立ったすごく良い作品になったのは
やっぱり原作者と監督とが同じ人だったからできたことなのかもしれない。
「ゆれる」も断然読みたくなってきた。いや映画が先か。それとも本が先か。
今度は逆にしてみようかな。