小説家と商業ライターの大きな違い。オンラインサロンの勉強会で、芥川賞受賞作家・藤野可織さんの公開インタビューをしました。

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先日、私が主宰するオンラインサロン「京都くらしの編集室」の勉強会に、芥川賞受賞作家・藤野可織さんに来てもらい、いろんな角度から「書くことについて」のお話を聞かせてもらいました。

藤野さんの文章を読むと、本当に描写がすばらしく、その光景がありありと目に浮かぶようなのですが、それをどうやって身に付けたか?というのが詳しく聞けて、とても良かった。

それはすでに、いろんなインタビューで答えられていることなので、ぜひ検索して見てもらえたらと思うのですが、簡単に言うと、「見たことを見たままに言語化する練習をする」でした。主観を入れずあくまで客観的に見たままを書く。

これがやってみると、意外と難しいのだけど、この練習をすると自分の勝手な思い込みに気付くこともできるので、とてもいいと思う。

私ももっとこの練習していきたいなと思った。語彙力も付くはず。

それともう一つ、どんな風に依頼を受け文章を書くかというのが、小説家と商業ライターで全く違っていたのが、かなり衝撃だった。

たとえば、商業ライターが雑誌やWebなどに記事を書く場合、読者が読みたいことをまず考える。今はこれが人気だからとか、このテーマが需要があるからとか。まず読者のこと、世間のことを考えて書くテーマが決まることが多い。

でも、藤野さんに依頼が来るときは、ざっくりと「旅」や「健康」など、テーマは決まっているものの、実際に何を書くかは、全て作家にゆだねられていると言う。

旅をテーマに書いたけど、書き終わってみたら全然違っていた…となってもいいのだそう。原稿用紙30枚という依頼だったけど、書いてみたら、100枚になりました…となってもいい。その場合も、きちんと100枚分の原稿料が支払われると言う。

そ、そんなことが許される世界。商業ライターと真逆なのである。

自分の好きなことが書けていいなぁ。

と、一瞬思ったのだけど、よくよく考えるとそれはそれで大変だ。自分の好きに書いて、それがウケたらいいけど、大コケしたら、作家の責任になってしまう。よっぽど自分を信じていないとできない。それが毎回試されるのである。…怖い。

自由にはそれ相応の責任が伴うんだなぁと思った。

あと、藤野さんはずっと夜に執筆する夜型だったけれど、お子さんが生まれていやおうなく朝型になったそう。今でも夜の方が書ける気がしているけれど、子どもがいるから、朝型にせざるを得ないと言う。もどかしさはないですか?と聞くと「仕方ないですよねぇ」と言っていた。

その話を聞いてなんといういか、大物作家さんも、いろんな悩みを抱えているんだなぁと思った。「小説家」というと、特別な才能がある、私とは全然違う特殊な人という印象を勝手に持っていたけど、私と同じ人間なんだなぁというか。

そんな感想を後から伝えたところ

『小さなお子さんがいたらなにをするにもままならないですよね…。私ももうだめだの連続ですがなんとか続けて行かねばと思っております』

と返信が来て、改めて勇気づけられた。子育てをしていたら、もうだめだの連続になるというの、よく分かる(笑)それでも「なんとか続けていかねば」というのに、作家としての覚悟というか、そういう強い意志が垣間見えた気がした。

あぁ、楽しかった。

エッセイ「私は幽霊を見ない」は好きすぎて、ハードカバーと文庫本と2冊購入。

インタビューは楽しさしかない。夢中で話を聞いていたらあっという間に時間が来てしまって、事前に送っていた20くらいあった質問リストのうち3つくらいしか聞けなかった…(インタビューとしては失敗なのかもしれない)。

さて、そんな藤野可織さんの公開インタビューは、オンラインサロンメンバーはアーカイブで見ていただけます!あとからサロンに入っていただいた方も、過去のアーカイブは全て見ていただけますので、ぜひサロンでお待ちしています!

次回の募集は、2025年4月1日から。春の募集までしばらくお待ちいただくことになりますが、事前予約していただくと空席ができたときに優先的にご案内させていただきます。

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。