「沈黙は怖くない」──学生たちがインタビュー講座で得た気づき

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先日、同志社女子大学でインタビュー講座をしました。通常の講義とは別で、有志で冊子作りをしている学生たちに向け、インタビューとは?を体験してもらう90分のワークショップです。

ライター歴18年、これまでに1,500人以上の方にインタビューさせてもらった私が大事にしている10のコツをお伝えして、実践してもらったのですが、今回の講座で、一番学びになったこととして学生が挙げていたのが、「沈黙は怖くないと気が付けたこと」とアンケートにありました。

質問をしたあと、相手が沈黙してしまったときに「焦る」と答える学生が多く、また次の質問が浮かんでこないと悩む学生も多いのですが、次の質問どうしよう?と考えているときほど、実は相手の話を聞けていません(自分が上手く質問することしか考えていないとも言える)。

質問をして相手が黙るということは、相手がその質問に関して答えを考えている時間とも言えます。質問してスラスラ答えてもらえた場合、いっけんインタビューが上手くいっているようにも見えるかもしれませんが、実は、簡単に答えられる質問だった=深く考えなくても答えられる質問いうことにもなります。

つまり、これまでに何度か聞かれてきたことで、すでに話したことがあるから、スラスラと答えられる。

沈黙しているということは、深く考えているということでもある。そこで沈黙を埋めようと、焦って追加で質問をしたりすると、せっかく考えているのにそれを邪魔してしまうことにもなりかねません。

なので、沈黙は怖くないよということを学生に伝えました。というか、むしろじっくり答えを待つ大事な時間でもある、と。まぁ、場合によっては質問が難しかったり、困らせたりしていることもあるかも知れないけれど。そんなときは、しばし待ち、改めて質問し直せばいいだけであって、無理に間を埋めようとしなくていいのです。

間を埋めようとして、焦ってしょうもない質問をするより、沈黙を保つ方がよっぽどマシじゃないかなと私は考えています。インタビューされる側だったら、よりそう思う。

そのほかアンケートに、いくつか質問があったので、こちらでも答えてみようと思います!

話を聞きながら、メモを取るのが難しかった、メモを取るコツが知りたいという質問。インタビュー中は、録音することも多いですが、3000字以下の原稿の場合、私はメモを見返すだけでも書ける場合が多く、その位しっかりメモしています。

話を聞きながら、かつ要点をメモするには…やはり練習が必要で、私も最初は全然メモすることができませんでした。学生だったら、講義を聞きながら、「先生の話してくれたことをメモする」ことが、とてもいい練習になるかと思います。

普段の会話でも私は気に入ったワード、忘れたくない言葉はメモする習慣があり、そこで何をメモするか?で言語化する力も鍛えられるような気がします。言語化しないとメモもできないし、話してくれたことの中から、どこをメモするかで要点を抜き出す力もつくような気がします。

あとメモするのは、話してくれたことではなく、話を聞いて自分が気付いたこと、考えたこと、分からなかったワードなども書いておきます。そして、どうしても聞き取れなかったことは、「漢字ではどう書きますか?」とか、「正しく書きたいので、もう一度教えてください」と話を止めて、メモを取ることもあります。

決して「途中で会話が止まっていけない」というルールはないし、インタビューとはそもそも、原稿を書くために話を聞きにいっているのだから、メモする時間を取るのも全然ありだと思っています。

あと、一言一句書き留める必要はなく、大事な単語だけを書き取るようにしています。単語がメモできるようになったら、その次は少し長くなって、箇条書きもできるようになる。メモは、文章にする必要はないし、私も文章でメモすることまではできていません。

速くメモできるようになるというのも練習と慣れ。才能とか一切関係なく、ただの練習と慣れです。できないなら練習すればいいだけ。

そのほか「限界まで考えても質問が思いつかなかったときは、どうしているか?」という質問もありました。

質問が思いつかないなら、「必要なことは全て聞けた」ということだから、無理に質問をしなくていいと思います。質問するためいっているのではなく、原稿を書くために必要な素材を集めにいっているのだから、その素材集めに必要な質問をすればいいのであって、質問が浮かばないなら、それはそれで終わりということ。

ちなみに私は、最後に言い残したことはないか?これは書いておいてほしいということはないか?私の聞き漏らしたことはないか?という質問をすることはあります。この質問をすること自体、ライターとしてちょっとサボっているような感覚があるので、本当に困ったときだけ、たま~に活用しています。

最後に、質問がうまく出てこないとき、場をどのように繋げていくといいのか?という質問。

インタビュー中に、会話は特に繋げる必要はないので、答えとしては、次の質問が出てこないなら、いったん沈黙になってもいいので、聞きたいことは何なのか、落ち着いて考えればいい…です。むしろ、場を繋げようとして変な質問をしたりしないことの方が大事だと思います。

会話は繋がってなくてもいいし、途切れ途切れでもいいし、話が行ったり来たりしてもいいのです。普段の会話でも別に、そうなってもいいんじゃないかと思います。ただのおしゃべりをキレイに繋げる必要がどこにあるのか?

インタビュー講座を始めたばかりの頃、会話が途切れてはいけないとか、会話を盛り上げないといけないと思っている人も多いんだなぁという発見がありました。

インタビューの場合、どんなに会話が盛り上がって楽しかったとしても、いい原稿が書けなければ大失敗です。逆に、淡々としていて、盛り上がる場面が一切なかったとしても、いい原稿が書けたなら、それは成功。

究極をいえば、インタビューなら、別に友だちみたいに仲良く話せなくてもいいし、笑いなど一切なくてもいいのです。いい原稿を書くための素材となる話を聞きにいっているのだから、原稿を書くのに必要な話が聞けたら十分。

その上で、気が合って話が盛り上がったり、笑いが起きたり、その後も連絡を取るくらいの間柄になったりしたら、それはそれで良かったねとは思います。

誠実にその人の話が聞きたいと思っているなら、単に場繋ぎのための質問とか、場を盛り上げるための言葉とかは必要ない…という姿勢で私はインタビューに臨んでいます。

そんなわけで、もし、あなたがこれから誰かに話を聞く機会があったら、沈黙を少しだけ味方にしてみてください。きっと、いつもより深く相手とつながれるはずです。

沈黙を共有できる相手って、逆に心地よくないですか?

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この記事を書いた人

江角悠子

1976年生まれ。京都在住の文筆家・編集者、ときどき大学講師。ブログでは「ふだんの京都」をお伝えするほか、子育てエッセイも。コーヒー・旅・北欧・レトロ建築をこよなく愛す。